頭痛専門医試験の勉強法|実際に受験してわかった3種の神器とHMSJ・参考書
頭痛専門医試験を受けたい。でも、何を、どこまで勉強すればよいのかわからない。
特に地方で勤務していると、周囲に頭痛専門医を目指している医師が少なく、受験経験者から情報を得る機会も限られます。
私自身も地方の急性期病院で勤務しながら、頭痛専門医試験を受験しました。
そこでこの記事では、実際に勉強して受験した経験から、
「もし、もう一度受験するなら何を優先して勉強するか」
という視点で、教材、Headache Master School Japan(HMSJ)、参考書、論文の読み方までまとめます。
なお、本記事は試験問題の再現を目的としたものではありません。
具体的な問題文、選択肢、正答など、学会から公表されていない試験内容の詳細については掲載しません。
受験資格や試験日程なども変更される可能性があるため、必ず日本頭痛学会の最新情報を確認してください。
まずは、3種の神器の徹底を
何から始めればよいか迷ったら、まず3つに絞ってよいと思います。
通称、頭痛専門医試験の3種の神器と呼んでいるのが、
- 『頭痛専門医試験 問題・解説集 第2版』
- 『頭痛の診療ガイドライン2021』
- 『国際頭痛分類 第3版(ICHD-3)』
です。
これは受験後も変わりませんでした。
日本頭痛学会の「頭痛専門医への道」にも、ICHD-3、頭痛の診療ガイドライン2021、頭痛専門医試験 問題・解説集 第2版が掲載されています。
試験対策としては、参考書や論文に手を広げる前に、まずこの3つをどこまで使い込めるかが重要だと思います。
私は以前、頭痛診療に役立つ書籍をまとめた記事でも、この3冊を「三種の神器」として紹介しました。

こちらでは、それぞれの書籍の特徴や専門医試験以外も含めたおすすめ書籍を詳しく紹介しています。
過去問を正解を覚えるだけでは足りない
過去問で本当に大切なのは、1問からどこまで知識を広げられるかです。
過去問は最優先でよいと思います。
ただし、この問題の答えはAと覚えるだけでは十分ではありませんでした。
たとえばTACsの問題を間違えたら、その疾患だけではなく、
頭痛の部位は?
頭痛の機序は?
頭痛の発作時間は?
頻度は?
自律神経症状は何が起こる?
落ち着きのなさは起こる?
インドメタシンへの反応は?
など、類似疾患との違いまでICHD-3で確認する。
薬剤が出てきたら、ガイドラインや添付文書を開いて、
用量は?
禁忌は?
相互作用は?
小児では?
妊娠・授乳では?
と、もう一段掘り下げる。
過去問を単なる問題集ではなく、ICHD-3やガイドラインを開くための索引として使う。
これが遠回りなようで最も効率のよい勉強法だったと思います。
ICHD-3とガイドライン
普段の診療と専門医試験では、ICHD-3とガイドラインの読み方を変える必要がありました。
日常診療では、ICHD-3もガイドラインも辞書のように使っています。
診断基準を確認したければICHD-3を開く。
治療について迷えばガイドラインを開く。
それで十分です。
しかし、専門医試験ではそうはいきませんでした。
試験対策としてのICHD-3やガイドラインは、イメージとしては六法全書やイヤーノートでしょうか。
診断基準やガイドラインの細かな文言や数字まで確認する必要があります。
推奨されている治療だけではなく、疫学、病態、診断、特殊集団、補完療法まで、こんなところまで?と思う部分も含めて読み込んでおいた方がよいと思います。
特にICHD-3では、発作回数、持続時間、頻度、寛解期間といった数字も重要です。
普段の臨床なら、その場で確認すれば済みます。
試験では、その場でICHD-3を開くことはできません。
専門医試験の期間だけは、普段は調べれば済む知識まで暗記する。
ここは割り切った方がよいと思います。
TACsは詳細に各疾患を比較できるまでマスターすべし
TACsは、それぞれを単独で覚えるより、横並びにして比較する方が理解しやすくなります。
群発頭痛、発作性片側頭痛、SUNCT/SUNA、持続性片側頭痛。
頭痛診療をしていれば、もちろん疾患自体は知っています。
しかし試験勉強では、群発頭痛を知っているでは足りません。
それぞれについて、
発作の持続時間、1日の発作頻度、疼痛部位、自律神経症状、落ち着きのなさ、インドメタシン反応性
などを表にして整理し、何度も見返すのが有効でした。
TACsに限りませんが、専門医試験では典型例を診断できるかだけでなく、よく似た疾患をどう区別するかまで理解しておく必要があると感じました。
片頭痛だけを勉強していては足りない
頭痛診療のUpdate=片頭痛のUpdateにならないよう注意が必要です。
ここは、受験勉強をして改めて感じました。
片頭痛は近年、新しい治療薬が次々と登場しています。
私自身、学会や文献だけでなく、製薬会社主催の講演会などを通して最新情報に触れる機会も多く、日常診療をしているだけでも比較的Updateしやすい領域でした。
一方、専門医試験の勉強では、片頭痛だけでなく、群発頭痛をはじめとするTACsやさまざまな一次性・二次性頭痛まで視野を広げる必要があります。
特に群発頭痛では、国内で承認・保険適用されている治療と海外でエビデンスがあっても国内では適応外となる治療を区別して理解することも重要です。
日本頭痛学会のガイドラインでも、群発頭痛の治療については、酸素療法やスマトリプタン皮下注などに加え、海外でエビデンスが示されている予防療法などが整理されています。
専門医として勉強するのであれば、
日本で何が使えるかだけではなく、世界ではどのような治療が標準と考えられているのか。
にも目を向けた方がよいと感じました。
もちろん、実臨床で適応外使用を行うかどうかとは別の話です。
エビデンスがあることと国内で承認・保険適用されていることは分けて理解する必要があります。
HMSJは資格のためだけで受けるのはもったいない
これから受験するなら、可能であれば受験前の秋と受験年の春のHMSJは受講しておくことを勧めます。
HMSJ(Headache Master School Japan)は、頭痛医学を体系的に学べ、最新の知見をアップデートできる貴重な機会です。
私自身、直近のHMSJとポストテストは直前期に入念に復習をしました。
受験してみて感じたのは、HMSJは単に専門医申請の研修歴を満たすためだけのものではないということです。
ガイドライン刊行後の新しい治療、最近注目されている病態や研究などを、一度にUpdateできます。
特に、
受験前年の秋 → 受験年の春 → 専門医試験
という流れは非常に相性がよいと思います。
もちろん、HMSJ自体が専門医試験対策講座として開催されているわけではありません。
それでも、私がもう一度受験するとしたら、秋と春はできるだけ参加します。
3種の神器に加えて、特によく使った3冊
三種の神器で理解しにくい部分は、読みやすい参考書に頼った方が早いです。
今回、特によく使ったのは次の3冊でした。
頭痛治療薬の考え方,使い方 改訂3版
頭痛に関する薬剤が網羅的に解説されているだけでなく、非薬物療法についても詳細に載っています。
頭痛治療薬について、作用機序だけでなく実際にどう使うのかまで理解するのに便利です。
新しい治療薬について、ガイドラインだけでは追いついていない部分を補う目的でも役立ちました。
https://chugaiigaku.jp/np/isbn/9784498428041
片頭痛の診かた 一歩進んだ片頭痛診療をめざして
片頭痛について、一度体系的に整理し直すのに役立ちました。
片頭痛は普段から診療しているだけに、
これは知っているから大丈夫
と思ってしまいやすい領域でもあります。
解剖生理、病態(CGRPについての詳細を含む)、診断、疾病負担、治療まで一度通して学び直すことで、断片的だった知識を整理できました。
https://www.jmedj.co.jp/products/2303
その他のおすすめ書籍やそれぞれの本がどんな人に向いているかについては、こちらの記事にまとめています。

新薬は添付文書まで一度は読む
新しい薬は作用機序と効果だけではなく、どう使うかまで勉強しておいた方がよいです。
『頭痛の診療ガイドライン2021』が刊行された後も、頭痛治療は大きく変化しています。
そのため、新薬については参考書や講演で理解したつもりにならず、私は添付文書も確認しました。
見るべきなのは、
用法・用量、薬物相互作用、肝機能・腎機能、妊娠・授乳、併用時の注意点などです。
専門医試験という意味では、
この薬はCGRP受容体を阻害するだけではなく、どう処方するのか
まで理解しておく方がよいと思います。
ニューロモデュレーションについても同様で、刺激する部位、急性期治療なのか予防治療なのか、実際にどう使用するのかまで整理しました。
論文はどこまで読めばよい?
論文は最後です。まず過去問・ICHD-3・ガイドラインを優先しました。
試験勉強をしていると、
最近の論文まで読んだ方がいいのでは?
と不安になります。
私自身もいくつか読みましたが、時間が限られているので、PubMedで頭痛論文を片っ端から追うようなことはしませんでした。
特に参考にしたのが、日本頭痛学会ホームページの頭痛研究のトピックスです。
このコーナーは、頭痛診療に役立つ臨床研究や、頭痛・疼痛に関連する基礎研究について、最近の論文を日本頭痛学会が紹介しているものです。
2026年にも継続して更新されています。
最近の頭痛研究として何を読めばよいかわからない、という場合の入口として非常に便利でした。
また、今回の受験を振り返ると、日本人研究者による研究にも目を通しておく価値はあると感じました。
ただし、これはあくまで私個人の受験後の印象です。
日本人著者の論文を網羅するといった勉強法を勧めるわけではありません。
優先順位としては、
過去問 → ICHD-3・ガイドライン → HMSJ → 参考書・添付文書 → 余裕があれば、最近の論文
くらいでよいと思います。
論文を読む時間が限られているなら、頭痛研究のトピックスやHMSJで取り上げられた研究から始めるのが効率的でしょう。
もう一度受けるなら、この順番で勉強する
忙しい日常臨床や家庭との両立で行う、専門医試験対策は、知識を増やすより優先順位を間違えないことの方が重要だと思います。
もしもう一度受験するとしたら、私は次のように進めます。
まず過去問を解く。
わからなかったところをICHD-3とガイドラインで徹底的に確認する。
前年秋と春のHMSJ・ポストテストで最近の知識をUpdateする。
不足する部分や苦手分野を参考書や添付文書で補う。
余裕があれば、日本頭痛学会HPの頭痛研究のトピックスなどから最近の重要論文を確認する。
この順番です。
最初からICHD-3を1ページ目から暗記しようとしても、なかなか頭には入りません。
過去問を起点に、自分は何を知らないのか
を見つけてからICHD-3やガイドラインへ戻る方が、私は効率的でした。
そして試験が近づいてきたら、新しい教材にはあまり手を出さず、
TACs、診断基準の数字、薬剤の用法・用量や相互作用、小児・妊娠などの特殊集団、解剖・病態、二次性頭痛、新しい治療など、自分が曖昧なところを繰り返しました。
受験して感じたこと
周囲に受験仲間がいなくても、頭痛専門医試験の勉強はできます。ただ、先人の経験談はとても貴重でした。
地方在住で、周囲に同じ時期に頭痛専門医を目指している仲間はいませんでした。
講演会などで積極的に現地に赴き、頭痛専門医の諸先輩方から教えていただいた、
「どの教材を使ったか」
「どう勉強したか」
「何をやっておけばよかったか」
という経験談が非常に参考になりました。
具体的な試験問題を知らなくても、勉強の方向性がわかるだけで随分違います。
今回この記事を書こうと思ったのも、その経験があったからです。
試験問題を復元して残すのではなく、
「実際に受けてみて、これをやっておいてよかった」
「ここは、もっと勉強しておけばよかった」
という部分を、次に受験する先生に残しておきたいと思いました。
試験勉強そのものが、頭痛診療を学び直す機会になった
受験して一番よかったのは、頭痛診療を体系的に学び直せたことでした。
日常診療では、どうしても自分がよく診る疾患に知識が偏ります。
片頭痛はたくさん診る。
二次性頭痛も見逃さないよう日頃から意識している。
一方で、TACsや特殊な一次性頭痛、解剖・神経生理、遺伝性疾患、小児、女性のライフステージ、補完療法などは、必要になったときに調べることが多くなります。
専門医試験では、その必要になったら調べる知識まで、一度頭の中に入れ直さなければなりません。
覚えることが多く、大変ではありましたが、ICHD-3を読み、病態を整理し、ガイドラインを読み直すうちに、それまで断片的だった知識が少しずつつながっていきました。
頭痛は非常にありふれた症状です。
しかし深く勉強すると、解剖、神経生理、薬理、脳卒中、感染症、眼科、小児科、産婦人科、精神医学まで関係します。
改めて、非常に奥の深い領域だと感じました。
専門医試験はゴールではなく、頭痛診療をさらに深く学んでいくための一つの通過点なのだと思います。
まだ受験したばかりで結果はわかりません。
それでも、今回学び直したことは、これからの診療、研究、教育に生かしていきたいと思っています。
これから頭痛専門医を目指す先生、とくに周囲に受験経験者が少ない環境で勉強している先生に、少しでも参考になれば幸いです。
※ 本記事は、2026年度に頭痛専門医試験を受験した筆者個人の経験に基づくものです。日本頭痛学会が公式に示した試験対策ではありません。また、試験問題、選択肢、正答の再現を目的としたものではありません。受験資格、申請方法、試験日程などについては、日本頭痛学会の公式情報をご確認ください。
